*注意*
WW2話です。
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――事態は、次第に悪化している。

三人は皆、それを痛いほど感じていた。
今も、いつ敵の襲撃を受けるか分からない。
もうとっくに陽が沈んだにも関わらず、三人は歩を休めることはない。
会話すらなく、終始無言で歩き続けた。

いつからきちんと休んでいないのか。いつからちゃんとした食事をとっていないのか。
考えれば途端に疲労と空腹が一気に襲ってくる。
今は無心になって歩き続けるしかない。



「――あ!」
いきなり声を上げ足を止めたたイタリアを、二人は瞬時に振り返る。
何か、あったのかと瞬時に考えを巡らせ、二人とも焦りの表情を浮かべていた。

「見て見て、流れ星!」
そう言って、イタリアは嬉しそうに笑って視線を上に向けながら空を指差す。
あまりにも予想外な彼の答えに、ドイツと日本の二人は拍子抜けし、呆気にとられたように無言でイタリアを見つめていた。

「ヴェー!?ごごごごめん、俺、何か悪いこと言った…?」
二人が何も言わないのに気付きイタリアが視線を戻すと、そこには無言で自分を見つめる二人の姿があった。
その光景を見て、恐らく二人を怒らせてしまったと思ったのだろう、泣きだしそうな表情でイタリアは慌てて二人に謝罪の言葉を口にする。
そんな、彼のいつも通りの反応に。



「…………ぷっ」


ドイツと日本の二人は同時に噴き出し、笑い出した。
お互い、相手が自分と同じように噴き出したことが更におかしくて、二人の笑いは収まることなく、次第に大きくなっていく。
そんな二人を見て、イタリアはきょとんとしてぱちぱちと瞬きを繰り返し、今度は彼のほうが固まってしまう。

二人は、笑いが収まると、先程彼がしていたように、空を仰ぐ。
そこには、まるで零れ落ちてきそうな満天の星空があった。
自分がちっぽけな存在だと思い知らされるような、圧倒的で荘厳な迫力。
そして、時々光る、流れ星。
恐らく、流星群が来ているのだろう、空を見つめていればすぐに流れ星が見つかるほどの頻度で光が流れていく。

「……すごい、こんなたくさんの流れ星、見たの初めてです」
思わず感嘆の息を漏らして、日本が呟く。
何も言わなかったが、ドイツも日本と同じだった。

二人は視線を空からイタリアへと移した。


「お前がいなきゃ、こんな綺麗な星空は見えなかったな」
「教えてくれてありがとうございます、イタリア君」


そう言うと、二人は無意識のうちに微笑んでいた。そこでやっと我に帰ったイタリアは、二人の笑顔を見て、途端に破顔する。

「だって、俺らは仲間なんだからさ。悲しいことも辛いことも一緒なら、楽しいことも、ことも分け合わなくちゃ」
それを、さも当たり前のことのように言うイタリアに、二人は目を丸くする。



「それに」
イタリアは、にっこりと笑って続ける。

「最近二人とも笑ってなかったでしょ?だから、今二人が笑ってくれて、すっごく嬉しいんだー」


そう言われ、二人ははっとした。
笑うことも、空を見上げることも、ひどく久しぶりだった。

今まで、ひたすら前だけを見て。
空を見ることを足元を見ることもなくなって。
立ち止まることを、拒み続けてきた。

しかし、彼は違っていた。
進み続ける自分たちに、大切なものを、思い出させてくれた。
彼ならば気付けるのだろう。空を流れる星や、地面に咲く花に。



笑顔をくれたのは、この美しい星空ではなく。
目の前にいる、彼なのだ。





彼がいたから。
自分たちは、あの時笑うことを忘れずにいられたんだ。










***




書きあがるまでにかなり時間がかかったもの、です。
枢軸の話が書きたかったのですが、うまく書ききれなかったような気がします…
戦闘に関してはたとえ足手まといだったとしても、きっとイタちゃんは精神面において独と日の支えだったと思うんですよね。
そうやってあとがきで説明しなきゃいけない文じゃ、まだまだですね…精進します。
あ、戦況が佳境に入ってから3人が一緒に行動した日があったのかは分かりませんが…そこはまぁ考えない方向で…

080402*水霸