*注意*
WW2話です。
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兄弟で一緒にいた時間は、生きてきた時間を考えれば、ひどく短いものだった。
初めは戸惑ってばかりで、冷たい言葉しかかけれなかった。
(もっとも、それは時が経ってもあまり変わらなかったが。)

弟が大事なのは、紛れも無い事実。
でも、素直な弟の笑顔は、近くで見るにはあまりにも眩しすぎて。近づけばその分、自分の汚さが露見する気がして。
だから、わざと遠ざけようとしていた。
ひどい言葉ばかりを、口にして、泣かせたこともあった。

なのに。

ヴェネチアーノは、自分に近づくことをやめなかった。
それをうっとおしいと口にしていても。
本当は、自分が何言っても俺のことを好きだと屈託なく笑ってくれるあいつに、俺は救われていた。

――もっとも、それに気付いたのは、全てを壊してしまった後だったが。



自分の行動を、謝ることもできずに。
素直になることもできずに。
心にもない言葉で弟を傷付けて。
涙を流す弟をそのままに、逃げるようにその場を去った。





家に帰っても、胸に残るのは罪悪感ばかりで。
部屋に篭ってベットの上で膝をかかえていた。

ドアを叩く音で目を覚ました時には、既に日が沈んでいた。
どうせ上司だろう、と黙っていたのだが、かけられた声の持ち主は、予想外の人物だった。

「ロマーノ?」
「……え?」

ドアを開くと、そこに立っていたのは、スペインだった。


「…こんなところで何やってんだよ、お前。そんな暇は…「お前…連合の方についたんやってな」
「っ……!」

スペインの言葉に、思わず目を見開いた。情報の早さに驚くと同時に、それを告げたのが目の前の人物であることに、衝撃を受ける。




「裏切り者、って言いたきゃ言えよ」
思わず相手から目をそらし、紡いだ言葉は心なしか震えていた。

「…俺にはそんなこと言う資格あらへんよ」
「別に、誰に言われたって構わねぇよ。…どうせ、ヴェネチアーノだってそう思ってるだろうよ」
「ロマーノ」
「どうせ俺は、あいつみたいにはなれないんだ。こういう手段しか、俺には選べない」
――自分の信念を貫くこともできずに、いつも逃げてばかりで。

「あいつは…人を笑顔にできる。それに引き換え、俺は本当の役立たずだ。」
「…イタちゃんにはイタちゃんの、ロマーノにはロマーノのよさがあると思うで。」

思わず俯いたロマーノを暫く見つめた後、スペインが口を開く。
「それに、それがロマーノの出した答えなら、俺は何も言わへんよ」
「スペイン…」
「何が正解で何が間違っとるかなんて、誰にもわからへん。それに、ロマーノが悩んで悩んで出した答えなら…結果がどうなろうと、誰もお前を責めることなんてできへんよ」
「でも」
「ロマーノは、ロマーノのままでええんや。誰も嫌いになんかならへん。兄弟やねんから、イタちゃんもロマーノの気持ち、ちゃんとわかってると思うで。」


スペインにそう言われ、弟の姿を思い浮かべる。
次に会う時に、少しは素直になれるだろうか。
仲直り、できるだろうか。




「それに」
再び口を開いたスペインは、そこで言葉を区切り、にっこり笑った。


「俺は、たとえ世界が敵に回っても、いつまでもロマーノの味方や」


何たって俺は親分やからな、なんてあいつが笑顔でクサイ台詞を吐くから。
「……バッカじゃねーの」

不覚にも、涙が零れそうになったんだ。











***




分かりにくいかもですが一応ロマーノが連合側についた後の話、です。
このときの伊兄弟の状況とか西兄ちゃんの状況とかよく分かってないので曖昧な感じですが…とりあえず南イタリアだけ先に降伏でいいのでしょうか…間違っていたら申し訳ありません。
西兄ちゃんの喋り方が思いのほか大変でした…。

080402*水霸