*注意*
WW2話です。
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俺よりずっと強いのに、不器用で、誰より優しくて、俺を守ってくれた人。
俺より小さいのに力も心もすごく強くて、俺の失敗を笑って許してくれた人。

彼らは、どんな気持ちで戦ったのだろう。
彼は。どんな思いで仲間を残して戦場を去ったのだろう。
彼は。どんな思いで一人刀を振り続けたのだろう。

それは、いち早く戦いから逃げた俺には、想像するしかできないものだった。
――もっとも、俺には、そんな資格は、残されていないのだろう。



ヴェネチアーノはついに日本が降伏した、という報せを聞き、半ば放心状態で二人に思いを馳せていた。
浮かぶのは、三人一緒にいた頃の、楽しい思い出ばかりで。唇を噛み締めても、零れる涙をおさえることはできなかった。




「ヴェネチアーノ」

と、声をかけられ、やっと兄が部屋に入ってきたことに気付く。

「兄ちゃん…」

ロマーノは暫く何も言わずに立っていたが、ゆっくりと数歩ヴェネチアーノへと歩み寄り、微妙な距離を保ったまま、腰をおろした。



「……終わった、んだろうな。これで」
「そう…なのかな」
「まぁ、まだいろいろやることはあるだろうけど、な…」
「…戦争が終わって、何が変わるのかな…」
「…ヴェネチアーノ?」
「…世界が変わっても、昔に戻ることはできないんだよ、ね…」

「イタリア」
「イタリア君」

彼の脳裏をよぎるのは、困ったように笑う、二人の姿だった。




「…俺、きっともうドイツにも日本にも、嫌われちゃってるよね…」
口を開けば、自責の念ばかりが込み上げてきて。
再び、涙が頬を伝った。

「前みたいに一緒にご飯食べたり、昼寝したりしたい、なんて、そんなこと…聞いてくれるっ、訳、ないよねっ…、もう、二人に合わせる顔も…」
「…会いにいけばいーじゃねーか」
「え…?」

ぽつり、と。
こちらに視線も向けず独り言のように、自分の言葉を遮って紡がれたロマーノの言葉にヴェネチアーノは顔を上げ、驚いた表情で相手を見つめていた。



「会いに行けばいいだろ。…今すぐは、まだ大変だろうから、難しいかもしれないけど…全部、終わったら、行けばいいだろ。それで、謝ればいーじゃねーか」
「でもっ、謝ったってそんな簡単に許してもらえることじゃ…」
ロマーノの言葉に反論しようとするが、ロマーノは真剣な目を向け、再びヴェネチアーノの言葉を遮った。
「お前は、仲間を真剣な気持ちも伝わらない、そんな奴だと思ってんのか?」
「そ、そんなことないよ…!ドイツだって、日本だって…いつも俺がいくら失敗してもっ、許してくれて…」


いつも、ひどい失敗をしても、根気よく説明をしてくれた。怪我の心配をしてくれた。
そんな、優しい人たちだった。


「なら、大丈夫だろ」
「にいちゃ…」
そうきっぱりと言い切るロマーノに、ヴェネチアーノは何も言えなくなる。



「…お前は、馬鹿みたいに素直だからな。…思ってること、そのままぶつけられるだろ」

まるで、弟を裏切った俺を包み込んでくれた、あいつのように。

――そういう素直さを持ってない俺は。
裏切って降伏したことさえ、お前に謝ることはできないけど。
その代わりに。



「…あいつらだって……誰も、お前のこと嫌いになったりしねーよ」



裏切った俺にも、笑顔を向けてくれた。許してくれた。
一度くらいは、そんなお前の救いになりたいんだ。


(これが、俺の精一杯の罪滅ぼし)












***




いつもはロマーノがイタちゃんに救われてばかりだけど、一度くらいは逆があってもいいんじゃないか、という妄想から生まれたネタです。
でも二人ともなんか偽者ですみませんorz

080402*水霸